個人情報収集問題への回答が気になるので F8 2019 に来た件
ここのところ、Facebook が外部からの報道、圧力で揺れている。問題になっているのは大きく分類すると
- 行動履歴を含めた個人情報の収集と第三者への提供
- 課税
- 規模を背景にした取引先との不公正な関係
広告に関係する仕事をしていると、やはり個人情報へのプラットフォームのスタンスは常に気にせざるを得ない。ということで、今現在、F8 2019 に来ている。
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結論から言うと
結論から先に言うと、期待していた(正確にはしていなかったが) EU を中心として各国で広まりつつある個人情報保護の観点からの今後の対応は発表されなかった。
個人情報保護の観点からいうと、問題はいくつかある。
- そもそも個人情報を持ちすぎではないのか。
- 個人情報を保護できているのか。
- いわゆる属性情報に加えて、ブラウザの閲覧履歴など、大量の行動履歴を保持している問題。
- 収集した個人情報を本人の同意なしに第三者に提供しているのではないのか。
- 巨大プラットフォーマーが収集した情報を元によりパーソナライズを進め、結果としてさらに寡占を進めるに至る問題。
今回は、2番目の「個人情報を保護できるのか」という観点で言及はあったものの、そこからうまくプロダクトの発表に問題をすり替えられた感が否めない。
そもそも何が問題とされているのか
そもそも、個人情報を収集することに関して何が問題になっているのか、ここで整理しておきたい。
Facebook は、個人情報を以下のように集めていると考えられる。
- 属性情報
- Facebook プロフィールで入力された個人情報
- LIKE またはエンゲージしている Facebook ページ
- 閲覧している外部の Web サイト
- Facebook 広告のエンゲージ・コンバージョン情報
- 行動履歴
- LIKE またはエンゲージしている Facebook ページ
- 閲覧している外部の Web サイト
- 使用しているスマホアプリ。ただし、Facebook SDK がインストールされているか、計測ツールで Facebook と連携設定している場合に限る。
- Facebook 広告のエンゲージ・コンバージョン情報
問題になりつつあるのは、ここで個人が主体的に入力したものではない、外部 Web サイトやスマホアプリでの行動情報となる。
これらは Facebook ログインしているかに限らず収集され、外部 Web サイトの場合はそのブラウザで Facebook ログインしたタイミングで、スマホアプリはそのスマホで Facebook ログインしたタイミングで名寄せされる。
特にスマホアプリの場合、端末内の広告用 ID (IDFA または AAID) でトラッキングするので、アプリ内で Facebook ログインするかではなく、そのスマホで Facebook ログインした時点で名寄せされることになる。
こうしてエンドユーザが気づかないうちに集められ、名寄せされた行動履歴が広告のオーディエンス生成に利用されることになる。問題の一つはまさにここで、気づかないうちに行動履歴が収集されていることにある。
もう一点は、オワコンと言われつつも未だユーザ数が多い Facebook は、傘下の Instagram も含めるとまだまだエンドユーザからも広告主からも魅力的な媒体である。
そのような圧倒的な存在感を背景に、収集した行動履歴を元に各エンドユーザごとのパーソナライズを進めることができるわけで、さらにユーザの囲い込みが進んでいくことになる。そしてその結果、さらに行動履歴を収集することが可能になる。このサイクルこそが真の問題として挙げられつつある。
特に EU ではこの問題がフォーカスされていて、すでにドイツでは行動履歴の収集に関して制限命令も出ている。個人的にはこの問題に対して Facebook がどういう回答を出すか、またはどう道を切り開こうとしているか、その片鱗でも見ることができればと期待していた。
その観点では、今回は何も得ることができなかった。
個人的には
個人的には、行動履歴の収集についてはそこまで問題とは考えていない。理由は 2 点。
- そもそも現実世界での個人にフォーカスを置いて行動履歴を収集しているわけではない。名寄せする必要はあるが、現実世界での個人と紐付ける必要性は必ずしもない。
- 行動履歴の寡占という問題はあるものの、行動履歴の収集・活用という観点では中国が遙か先を行っており、グローバル視点で見ると GAFA は後塵を拝している。
金盾の向こうと比較するのはフェアではないかも知れないが、日本人の想像する典型的な中国・中国人像でものを考えると手痛い失敗を食らうと思っている。
中国はすでに行動履歴を含めた個人情報を元に信用スコアを算出し、激しい競争のもと、信用スコアに応じてベネフィットが変わる制度設計が広まっている。
その中で鍛えられたサービスがすでに金盾の外に広まりつつあるのは、国内のレジ横に貼られたアリペイなどのステッカーを見れば感じることができるだろう。
日本はようやくキャッシュレスが話題に上り始めているが、グローバル視点ではすでに収集した行動履歴をもとにどのような UX を構築するかという話になっている。個人情報保護とグローバルでの競争の両者のバランスをどう取るか、今後数年はここが一番重要になってくると考えている。