Facebook Graph API / Marketing API v3.1 がリリースされた件


Facebook Graph API v3.0 リリースからざっくり 3 ヶ月後の今日(日本時間)、Graph API v3.1 と Marketing API v3.1 がリリースされた。

権限モデルの整理: 役割ベースからタスクベースに

今回のアップデートで一番大きいのは、やはり Pages API と Business Manager, Facebook Pixel まわりを中心とした権限モデルの再構築だろう。これまでは管理者、広告アナリストといった役割ベースの権限モデルだったが、Pages API と Facebook Pixel 回りではこれがタスクベースでのモデル分割になった。

これまでの権限モデル

具体的に言うと、例えばこれまでは広告アカウントに対して以下の権限が付与できた。

  • 広告アカウントの管理者
  • 広告アカウントの広告管理者
  • 広告アカウントのアナリスト

また、Facebook ページの場合は以下だった。

  • ページ管理者
  • ページ編集者
  • モデレーター
  • ページ広告管理者
  • ページアナリスト

問題点とどう改善されるか

特に日本企業の場合、Facebook ページの運用は企業自身が運用しているか、または運用代行業者に依頼することが多い。一方で、広告は別の広告代理店に運用代行させていることがままある。

このように、Facebook ページの所有者、運用担当、広告運用がそれぞれ別の場合、これまでの役割ベースの権限モデルだと広告運用を代行する広告代理店にも Facebook ページのページ広告管理者権限を与える必要があった。この権限の問題点は、ページアナリスト権限より上のため、Facebook ページそのもののインサイトが見えてしまうことにある。その結果、本来は広告運用担当には共有する必要のない Facebook ページのインサイトを見せてしまうことになっていた。

これが役割ベースでの権限モデルに変更になることにより、広告運用担当には広告運用に必要な最小限の権限である ADVERTISE 権限のみを渡すことになる。これにより、広告運用担当には Facebook ページそのもののインサイトを見せることなく必要な権限のみを移譲できるようになった。

また、Facebook ページへのコメントの管理を外注する場合も、MODERATE 権限のみを渡せばいいことになる。これまではモデレーターとして権限を渡してしまうと Facebook 広告も出稿できるしインサイトも閲覧できてしまったが、こういった本来業務には直接関係のない情報・アクションの権限が必要以上に移譲されることはなくなったのは、各企業のデータ保護という意味で非常に重要と考えられる。

Facebook ページ関連の広告出稿に関する機能廃止

4 年前に「いいね」を集めるためのキャンペーンが禁止になって以降、Facebook ページへのエンゲージメントを集める広告というのはどんどん下火になってきていた。今回、広告セットの optimization_goalPAGE_ENGAGEMENT が指定できなくなったことにより、ページへのエンゲージメントを集めるという点に最適化した広告を出稿することはできなくなった

また、これに関連して、Facebook ページへの「いいね」を集める広告についても、いわゆる UPPA (Unpublished Page Post Ad) 形式での広告出稿はできなくなった。Facebook ページへ「いいね」を集める広告を出したい場合、実際に Facebook ページにポストし、そのポストを広告としてブーストする必要がある。

ある程度の流れとはいえ、わずか 4 年前にはあれだけ「いいね」を集めるキャンペーンが流行っていたのを考えると、このあたりの変更は一つの時代が終わった感がある。

その他の変更

それ以外の変更はざっくり以下のような感じとなる。

  • 一部 webhook の戻り値となる URL が https に変更。
  • Live API でのパラメータ名変更。
  • Insights API で店舗誘導関連のフィールド名の変更。
  • 来年 2 月 1 日以降、Facebook app が開発モードだとリード獲得広告の Webhook が無効になる。
  • Messenger Platform でユーザ情報の取得が姓名プロフィール画像のみとなり、それ以上の情報を取得する場合は審査が必要になる。今日以降作成の Facebook app については即日適用、それ以前に作成の app については来年 1 月 8 日までに審査が必要となる。

このように、今回のアップデートはデータの保護が主眼になっている。一方で、ここ半年ほど、広告主側からすると魅力的な新機能というのは全く見当たらない。広告としても使える Shopping on Instagram (いわゆるインスタショッピング広告) のリリースはあったものの、同機能のストーリーズへの展開については日本ではまだ未展開だし、今後すぐに展開されるわけでもなさそうな雰囲気になっている。

このような中、GDPR やセキュリティイシューの絡みもあって今後は広告の舞台がストーリーズに移行していくという話もちらほら聞こえる昨今、Facebook が広告プラットフォームとしてどういう方向に進んでいくのかは引き続き注視したい。