エンジニアのポテンシャル採用で自分が気にしている 6 つのポイント


最近、エンジニア転職に向けたスクールが流行っているらしく、勤務先の株式会社フィードフォースにも卒業生と思われる応募がそれなりにある。

自分の場合はそういった応募でもほぼカジュアル面談をやっているが、スクール修了者向けに採用側としてどこを見ているかを少し書いておきたい。

採用側のパターン

そもそもスクール卒業生はいわゆるポテンシャル枠で、即戦力ではない。そういったポテンシャル枠を採用する企業側の考え方としては、大きく以下の二つがあると思う。

  • ポテンシャル層を多めに採用して、そこから適性に応じてアサインする。一定の離脱率は想定済。
  • ポテンシャル層の中から自社のカルチャーに合いそうな候補者を選考段階で厳選して採用する。中長期的に育成することを想定し、早期の離脱は望んではいない。

前者は SES などで多いだろう。SES の売上はヘッドカウントに比例するので、スキルそのものよりもどれだけの人数をどれだけの現場に入れたかが重要だし、そもそもスクールがここまで流行る以前から未経験者を積極採用してきた。

かくいう自分もエンジニアとしてのキャリアは SES から始まったので、ファーストステップとして SES を選択し、職歴をつけることを否定はしない

勤務先、そして自分のスタンスだと後者になる。各プロダクトごとのエンジニアの絶対数が少ないこともあり、伸びしろに加えてカルチャーマッチは非常に大切にしている

どのようなエンジニアを求めているか

カルチャーマッチを大切にしているとはいえ、どのようなカルチャーか、何を重視しているのかは会社によって違うのは言うまでもない。

フィードフォースの場合、エンジニアの行動指針を作って年末に表彰したが、これがエンジニアのカルチャーを言語化したものと言ってもいいだろう。

  • Broaden Yourself; 己の限界を広げるべし。
    プロフェッショナルとしての知識・技術の習得に限界や終わりはない。常に最新のトレンドから枯れた知見まで幅広く意識を向け、実際に手を動かしながら己のものとすべし。
  • Prepare Yourself; 次の機会に万全であるべし。
    機会を掴み取れるのは、それに備えている者のみである。来たるべき機会に何が必要か、何が期待されているかを考え、常に万全であるべし。
  • Be Positive & Proactive; 常に肯定的・主体的であるべし。
    受け身であること、否定的に捉えることは誰でもできる。顧客への価値を最大化するため、次に何をできるか、よりよくするためにさらに何ができるかを常に考え、自ら行動すべし。
  • Know Yourself; 己に求められているもの、 そこまでの道筋を知るべし。
     己が何を求められているか、求められているものまでの道筋はどうか、そして己は今どこにいるかを常に知り、求められているものを完遂すべし。
  • Stay Humble; 常に謙虚であるべし。
    他者は異なった立場や文脈、背景を持っており、自分と全く同じではない。相手の立場、文脈を尊重し、かつ自分の伝えようとしていることを相手がどう理解しているか踏まえつつ行動すべし。
  • Share Everything; 己の知見は遍 (すべから) く共有すべし。
    己の学んだ知見の価値を決めるのは己ではなく、その知見に接する者全てである。共有する前に己でその価値を過小評価せず、遍く共有すべし。

ただ、これだけだとふわっとしているし、特にポテンシャル採用の場合はカルチャーマッチ以上に気にするポイントが多々ある。

そこで、自分が選考時に気にしている 6 つの着眼点を書いておきたい。

選考時に気にしている 6 つのポイント

エンジニア転職後のキャリアをどう考えているか

エンジニアのポテンシャル採用に限定した話ではないが、得てして目的と手段が混乱していることがある。
よくあるのは、「○○大学に入学する」ことが目的になっていて「○○大学に入学した後何をするか」が全く見えていない受験生がその典型例だろう。

エンジニアへの転職も同じで、エンジニアとして異業種転職することが目的ではない

採用する側としては採用後にプロフェッショナルなエンジニアとして成長することを期待して採用するわけだが、エンジニアとして転職するのが目的になっている場合は採用後にスキルが伸び悩むケースが結構な割合であるように感じる。

そういう意味でも、なぜエンジニアになりたいかに加えてジョイン後にどういうキャリアパスを思い描いているかは最重視している。

今学んでいることは何か、その課題は何か

ポテンシャル採用に限らず、知的労働者は終生スキルアップの連続だと思っている。特にエンジニア界隈だと技術の進歩は指数関数的に進んでいるし、マネジメント側に行ったとしてもマネジメントのためのフレームワークも進歩しているのでそこにキャッチアップしていく必要がある。

また、学生時代と違って一定の課題意識の元でキャッチアップをしていくことが多いので、今学んでいることとともになぜそれなのかは気にしている。

エンジニアとしてのアウトプット

大前提として、スクール卒業生のスクールでの制作物はそこまで注目して見ていない。そもそもスクールでのメニューが決まっているため、アウトプットにそこまで多様性があるわけではない。

一方で、スクールの制作物以外のリポジトリや Twitter, Qiita やブログなどが添付されている場合は時間をかけて確認している。

というのは、やはりどういう過程を経て今に至るのかどういう問題にぶつかってどのように解決したのかは重要だし、そこから今後の伸びしろであったりチームフィットであったりが分かるからというのが大きい。

また、仕事をしているとどうしても分からない、クリアできないことは出てくるもので、分からないことを分からないとしてそこからどう動くかはチームプレイとして非常に重要だと思う。

その観点からも重視しているし、そもそもプロフェッショナルとしては自分のアウトプットを説明することは必須だと思っていて、そういう意味でもアウトプットの質・量は非常に重視している。

今やりたいことは何か

今やっていることとは別に、やりたいことも自分は気にするようにしている。

というのは、「やりたいこと」の現実性が働き方に直結していると考えていて、ただ単純にやりたいだけなのかどうかでポテンシャル採用後の伸びしろを測ることができると考えているからになる。

余暇の過ごし方

何度も繰り返し書いてはいるが、採用後にスキルのキャッチアップを期待しての採用がポテンシャル枠になる。
会社から余暇を使ってのスキルアップを指示することは絶対にないが、一方で、キャッチアップには余暇を使ってのスキルアップも必須になると個人的に考えている。

そのため、余暇にどういうキャッチアップをしているか、なぜそれを選択したのかは必ず確認するようにしている。

一方で、採用されるとは「会社に対して会社が求めるレベルの成果物 (または労働力) を提供する」ことを期待されるということでもある。なので、翌営業日に万全の状態に回復して望むべきと思っている。

もちろん風邪を引いたりといった体調の波はあるし、会社側も work-life barance を担保するという大前提はあるが、心身ともにリフレッシュする趣味なりを持っているかが長期的な視点でも重要になる。そういう意味でも余暇の過ごし方は確認するようにしている。

カルチャーフィット

カルチャーフィットが最後に来るのは意外かも知れないが、そもそもポテンシャル枠なので伸びしろを最重視せざるを得ない。

しかし、カルチャーフィットは非常に大切にしている。ここでどういうカルチャーかは敢えて触れないが、Principles が比較的よく言語化できていると考えている。

最後に

自分がポテンシャル枠で進める場合に気にしている 6 点を挙げてみたが、これをすべて会話の中で見ているわけではない。
継続的に採用プロセスを改善しており、その中ですべてクリアになるようにしている。

また、採用とは会社からのマッチングだけではない。候補者側も「この会社でアウトプットを最大化できるか、楽しく仕事ができるか」を評価する場であり、会社としてもそういった評価を候補者側が下せる場を提供すべきだと思っている。


今回は敢えて自分が重視している点を書いてみた。会社によってカルチャーや求めるポイントも違うので多少の差違はあると思うものの、同じような傾向を持つ他社の選考においても大きく外していることはないと思う。

カジュアルに「エンジニアになれたら生活が一変する」「エンジニアになれたらいずれベイエリアに行って年収 XX 万ドルになれる」といったことは全くなく、スキルアップを怠るとあっという間に取り残されるシビアな世界でもある。

もしカジュアルに考えているのであれば、一度立ち止まって考えることをお勧めしておきたい。